もう自分で月次仕訳は打たない。freee × AI で2ヶ月45件をさばいた大家の経理運用
物件が増えてきて一番じわじわ重くなる作業、何かといえば経理だと思っています。
家賃の入金、借入の返済、固定資産税、火災保険、修繕費の精算、年に数回ある不動産取得時の決済仕訳……。1件ずつは数分でも、毎月20件以上発生し、しかも内容は物件ごと管理会社ごとにバラバラ。会計ソフト(弊社では freee 会計を使っています)の画面と請求書を行ったり来たりしているうちに、土曜日が一日終わっていることも珍しくありません。

前回の記事で、管理会社のオーナーポータルから毎月の収支報告書PDFをAIにダウンロードさせる仕組みを紹介しました。今回はその続きにあたる話です。
ダウンロードした明細PDFを使って、freee に月次の仕訳を登録するところまで AI に任せる。実際にこの運用を始めて2ヶ月、振替伝票で 45件・159明細 を AI と一緒に登録できました。月20件ペースです。今日はその仕組みと、何が変わったかを書いていきます。
大家の経理が地味に重い理由
大家業の経理には、月次でやっておかないと年末に積み上がる作業が結構あります。
私の場合、毎月発生する仕訳はだいたいこんな顔ぶれです。
- 管理会社からの月次送金(家賃売上+集金手数料+修繕費立替+募集広告費+更新料……を1件にまとめた複合仕訳)
- 借入金の返済(元金と利息を分けて、口座引落の実額に合わせる)
- 公共料金の支払い(電気・ガス・水道)
- 固定資産税の納付(年4回、物件と区ごとに通知書が来る)
- 火災保険の引落・期間按分
加えて、年に数回ある単発仕訳がそこそこ重量級です。
- 不動産取得時の決済仕訳(建物・土地按分、固定資産税清算金、敷金引継、家賃日割……)
- 銀行融資の実行(証書金額から印紙代を引いた金額が振り込まれる)
- 付随費用(仲介手数料、司法書士の登記費用、源泉徴収)
このうち、特にしんどいのが「複合仕訳」と呼ばれるタイプです。
たとえば管理会社から1ヶ月分の家賃送金が振り込まれたとき、実際には次のような構造になっています。
- 入金額そのものは1行
- でもその裏には「家賃売上」「駐車場売上」「集金手数料」「業務企画料」「フリーレント控除」「修繕費の立替」「募集広告費」……が混ざっている
- それぞれ勘定科目も税区分も違う(住宅家賃は非課売上、駐車場は課税売上10%、管理手数料は課対仕入10%……)
freee の画面で1件入力するだけでも10〜15分かかる作業で、これを物件×月数だけ繰り返すと普通に数時間が消えます。
やってみたこと:「○○マンションの3月分、仕訳して」と話しかけるだけ
ここに前回と同じく、Claude Code というAIアシスタントを噛ませました。
仕組みのコアになるのは、「freee に仕訳を登録する手順を、日本語で書いた手順書(スキル)」 です。プログラムというよりは、社内マニュアルに近い書き方をしています。
実際の使い方はこんな感じです。

私が ○○マンションの3月分、仕訳して と話しかけると、AI 側が以下を順番にこなしてくれます。
- Google Drive から該当物件の今月分の明細書PDFを開く
- PDFの内容を読み取って、家賃・控除・特記事項を構造化する
- 過去の同じ管理会社の仕訳を freee API で検索して、勘定科目・税区分・品目・部門の付け方を真似る
- 仕訳の中身(借方・貸方・金額・税区分・備考)を表形式で私に見せる
- 私が「OK」と言ったら freee に振替伝票として登録する
- 完了したら振込額・伝票番号を報告
実測で、シンプルな月次送金1件あたり1〜2分。複合仕訳でも3分以内に収まります。手作業で同じことをやると10〜15分かかっていたので、1件あたり数倍速い計算です。

特に効いているのが3番目の「過去の類似仕訳を参照する」工程です。
たとえば「修繕費は勘定科目が修繕費(id: 553883509)で、品目は修繕費(id: 200399883)で、税区分は課対仕入10%(コード:136)」みたいな細かい組み合わせは、人間が毎回覚えていられるレベルではありません。AI 側は freee API で過去6ヶ月の同じ管理会社の伝票を引っ張ってきて、「先月と同じ付け方」を自動で踏襲してくれます。
これにより、後から月次推移表を見たときに勘定科目や品目が揺れていないという、地味だけど大事な品質が保たれます。
ちなみに、freee 自体にも「取引テンプレート」という便利機能があり、私もこれまでは月次の家賃送金はテンプレートに登録して呼び出す運用をしていました。ただ、テンプレートで省力化できるのは定型部分だけです。その月特有の修繕費・更新料・募集広告費は結局手で行を追加し、PDFを見ながら金額を1つずつ打ち変えていました。
今回 Claude Code に任せるようにしてからは、テンプレートを呼び出す工程そのものがなくなり、PDFを読んで → 過去パターンを真似て → 行を組み立てて → 金額を当てはめる、までを一気通貫でやってくれます。テンプレートを使っていた頃と比べても、体感で数倍ラクになりました。
取得時の決済仕訳まで AI が下書きするようになった
月次の家賃送金や借入返済は割とパターン化しているので、自動化しやすい領域です。意外だったのは、不動産取得時の決済本体の仕訳まで AI が下書きできるようになったことです。
不動産を1棟買うと、決済日の仕訳は普通こんな構成になります。
- 借方: 建物・土地(売主への残代金を建物比率と土地比率で按分)
- 借方: 建物・土地(固定資産税清算金も同じ比率で按分)
- 貸方: 融資銀行口座からの振込
- 貸方: 仮払金の消込(契約時に払った手付金)
- 貸方: 売上高(決済日〜月末分の家賃日割と、売主が事前に受け取った翌月家賃)
- 貸方: 預り保証金(敷金の引継)
借方と貸方を合わせて10〜11行。さらに同じ日に「銀行融資の実行(収入印紙代控除)」「司法書士費用(報酬・登録免許税・源泉徴収)」「仲介手数料」「火災保険」が連発します。決済1件で振替伝票が4〜5本必要になる、というイメージです。
直近で1棟取得した際、これらの仕訳を決済案内のPDFを渡して「仕訳作って」と頼むだけでAI 側が一通り下書きしてくれました。建物・土地の按分比率、源泉徴収の10.21%、固定資産税清算金が不課税、敷金は預り保証金で負債計上……といった会計上のお作法は手順書に明記してあるので、AI 側もそれに従って組んできます。
もちろん、最後に内容を確認するのは私の責任です。ですが、ゼロから組み立てるのと、下書きをチェックして修正するのとでは、心理的負荷も時間もまったく違います。
「正しい人間のチェックポイント」を残す
ここまで書いておいてあれですが、全部自動化するのが正解とは思っていません。
会計はミスの巻き戻しコストが高い領域です。間違ったまま月をまたぐと税務にも影響しますし、過去仕訳を訂正するのは新規入力よりずっと面倒です。なので、現時点では次の方針で運用しています。
- 自動化する: 過去仕訳の検索、PDF読み取り、勘定科目・税区分の選択、振替伝票の組み立て
- 人間が判断する: 最終的な「これでfreeeに登録する」のGo/No-Go
- 特殊な処理: 通信欄に「※○号 礼金は退去時クリーニング費用として全額償却」のような注記がある場合、AI が「この処理でいいですか?」と聞いてくる
つまりAIは「処理スピードの速い、忘れない経理アシスタント」として動いていて、判断を肩代わりしてもらっているわけではない、という距離感です。これくらいの粒度で人間のチェックを残しておく方が、結果的にミスが少なく、かつ安心して任せられると思っています。
まとめ:物件が増えるほど効いてくる
不動産投資・大家業をやっていて、物件が3棟、5棟、10棟と増えていったとき、一番先に頭打ちになるのは経理を含む事務作業だと思います。
判断業務(買付け・退去対応・リフォーム・リーシング戦略)は、物件数が増えても1物件あたりの濃度はそこまで変わりません。一方、事務作業は完全に物件数比例で増えます。ここを人力でやり続ける限り、保有規模の上限は「自分が事務作業に割ける時間」で決まってしまいます。
逆に言えば、事務作業をAIに渡せるなら、保有規模の上限が一段上に上がるということでもあります。
弊社(株式会社PaPaPa)は今、保有12件です。今回紹介したような月20件規模の仕訳でも、AI 込みなら週末1〜2時間で片付くようになりました。これがあと数棟増えたとしても、運用は十分回せそうな見通しです。
これからも大家業まわりで「これ自動化できるな」と思った領域は、少しずつスキルとして積み上げていきたいと思います。次回は別の事務領域での試みを書いてみる予定です。
最後まで読んでいただきありがとうございました。経理の重さに悩んでいる大家さん仲間の参考になれば幸いです。
